"Charles's Library”管理人:紗瑠々による中世ヨーロッパについてのさまざまな紹介
Posted by 紗瑠々(しゃるる) - 2009.03.07,Sat
世界中をあちこち旅して廻り、なおかつ歴史に残る偉業を残したいとは思わないかね?そうは思っても、一昔前の遍歴の騎士よろしく、戦いの日々に身を投じるのはちとごめんときた。石工は、そんな君にぴったりの仕事だよ。なんといっても、石工の作品は永遠に残るんだ。都市を守る堅固な城壁がいらなくなるわけないし、この世にキリスト教徒が住まう限り、世界には教会が必要だ。
城壁や教会堂のほかにも、信仰に身を捧げる修道士のための、静かな祈りの場所である修道院や、高貴な人々のための新しい城砦など、建てるべきものはたくさんある。でも、修道院や城砦がいくつも並んで建てられないのと同じで、ひとつの都市が連続して2つも3つも大聖堂を建立することなどない。そんな余裕はどんな都市にもないからね。だから、石工は仕事がありそうな場所に、自分から赴いていく必要がある。だからいろんなところを旅するのさ。もっとも、安定した生活を望むのなら、都市の名士のために邸宅やギルド会館などの建築を担う、都市の石工として生活するという道もあるんだがね。
だが、自分の技術を最大限に駆使して、万民のために仕事をしたいと思うなら、目指すべきは大聖堂の建設だ。無論、名士たちをはじめとする都市住民の寄付が、莫大な費用負担の多くを占めるし、大聖堂の設計を施すのは建築家だ。でも、集まった資金と設計を基にして、無骨な石の塊を、洗練された聖堂へと生まれ変わらせるのは、なんといっても石工たちなんだ。天まで届くかのような尖塔や、ステンドガラスやいくつもの柱に囲まれた大伽藍を見た人々は、神への信仰心を新たにすると同時に、これを建てた石工たちへの畏敬を胸に抱くに違いない。
君が徒弟期間を終えて、晴れて職人として遍歴に出る際には兄弟団(中世における相互扶助団体。構成員はしばしば同業者組合に同じ)から君独自のマークを与えられる。このマークを、自分が削った石に掘り込むことで、君の仕事量は一目瞭然になるわけだ。仕事量は給金支払いのための大切な指標になる。そうそう、給金といえば親方は職人の倍の給金が出るのが普通だから、せっかく石工になるのなら親方を目指したいものだね。
最後に、石工になるにあたっては注意することがある。水と小麦しか扱わないパン屋と違って、石工は鋭い工具を扱うし、建築の時には高い位置で仕事をしなければならないこともあるから、転落の危険だってある。利腕を負ったりしてしまえばそれまで、石工としてはもう役立たずになってしまう。働かなければ生きていけない。そんなとき頼りになるのは兄弟団だ。だから、職人なら誰でもそうだが、特に石工になるんだったら、兄弟団との関係を良くしておくように忠告しておくよ。
城壁や教会堂のほかにも、信仰に身を捧げる修道士のための、静かな祈りの場所である修道院や、高貴な人々のための新しい城砦など、建てるべきものはたくさんある。でも、修道院や城砦がいくつも並んで建てられないのと同じで、ひとつの都市が連続して2つも3つも大聖堂を建立することなどない。そんな余裕はどんな都市にもないからね。だから、石工は仕事がありそうな場所に、自分から赴いていく必要がある。だからいろんなところを旅するのさ。もっとも、安定した生活を望むのなら、都市の名士のために邸宅やギルド会館などの建築を担う、都市の石工として生活するという道もあるんだがね。
だが、自分の技術を最大限に駆使して、万民のために仕事をしたいと思うなら、目指すべきは大聖堂の建設だ。無論、名士たちをはじめとする都市住民の寄付が、莫大な費用負担の多くを占めるし、大聖堂の設計を施すのは建築家だ。でも、集まった資金と設計を基にして、無骨な石の塊を、洗練された聖堂へと生まれ変わらせるのは、なんといっても石工たちなんだ。天まで届くかのような尖塔や、ステンドガラスやいくつもの柱に囲まれた大伽藍を見た人々は、神への信仰心を新たにすると同時に、これを建てた石工たちへの畏敬を胸に抱くに違いない。
君が徒弟期間を終えて、晴れて職人として遍歴に出る際には兄弟団(中世における相互扶助団体。構成員はしばしば同業者組合に同じ)から君独自のマークを与えられる。このマークを、自分が削った石に掘り込むことで、君の仕事量は一目瞭然になるわけだ。仕事量は給金支払いのための大切な指標になる。そうそう、給金といえば親方は職人の倍の給金が出るのが普通だから、せっかく石工になるのなら親方を目指したいものだね。
最後に、石工になるにあたっては注意することがある。水と小麦しか扱わないパン屋と違って、石工は鋭い工具を扱うし、建築の時には高い位置で仕事をしなければならないこともあるから、転落の危険だってある。利腕を負ったりしてしまえばそれまで、石工としてはもう役立たずになってしまう。働かなければ生きていけない。そんなとき頼りになるのは兄弟団だ。だから、職人なら誰でもそうだが、特に石工になるんだったら、兄弟団との関係を良くしておくように忠告しておくよ。
Posted by 紗瑠々(しゃるる) - 2009.02.27,Fri
粉挽きになりたいだって?止めておいたほうがいいと思うよ。なんていったって、粉挽きは村皆の憎まれ役なんだから。粉挽きは村から離れて、一人っきりで粉を水車を管理している。だから周囲の目のないところで農民から集めた小麦の目方をごまかしているに違いないと思われているからさ。もっとも、領主のバナリテ(水車小屋、パン焼き竈など公共施設の使用強制)があるから、使用量を払って粉を挽いてもらううより自宅の石臼を使いたいと思っている農民たちは、君が目方をごまかそうが、ごまかすまいが、粉引きの存在を憎々しく感じているんだけどね。
それでもいいと言うのなら、水車の管理権を委託してもらうために、まずは水車を保有する領主と契約を結ぶ必要がある。水車小屋を建て直したり、堰(水車の効率を高めるためにしばしば設けられていた)を修繕したりする場合は、ほとんどの費用を領主が払ってくれる。でも、粉を挽くための石臼やその運搬にかかる費用は、領主だけでなく粉挽きも負わなければならないよ。さらに、水車や装置を動かす大小の歯車などは、粉引きが自前で修理、購入しなければいけないんだ。
人に憎まれて、なおかつ維持費のかかるだけの仕事なんて誰もやりたがらない。もちろん、この仕事には旨味がある。まず、粉挽きは村の共同体に属していないから、村長による下級裁判権の支配を受けない。農民たちの理不尽な訴えにも法的に悩まされることはないわけだ。さらに、水車小屋の管理には水車用地の経営というおまけもついてくる。いや、おまけというには有益過ぎるかもしれない。なぜなら、この用地にはいくらかの耕作地や菜園、牧草地の他に、水車を回す河川の使用権も入っていて粉挽きは川で魚を獲ることさえできるのだから。領主権のひとつである河川利用権に守られた川で農民たちが釣りをしようものなら、たちまち罰金を課されてしまうだろう。
これだけの経済的優位にある粉引きは、当然ながら領主への貢納も大きい。でも、それを差し引いても粉挽きは農民たちとは比べられないほどに裕福だ。もし、君がそれほど野心家でなくて、出来るだけ人にも憎まれたくないのなら、都市の粉引き屋をお勧めするよ。都市内では当局の監視が厳しくて、粉挽きは下級役人のような位置づけになる。そもそも、穀物の売買や、家禽の飼育(穀物が飼料となる)が禁止されるから、たとえ目方をごまかしてもあまり利点はないんだ。
都市の粉挽きでは不満かい?まったく君は野心家なんだね。それならクレルヴォー修道院で水車小屋に空きがあると聞いたよ。受付係りの修道士ヨハネスを訪ねてみるといい。
それでもいいと言うのなら、水車の管理権を委託してもらうために、まずは水車を保有する領主と契約を結ぶ必要がある。水車小屋を建て直したり、堰(水車の効率を高めるためにしばしば設けられていた)を修繕したりする場合は、ほとんどの費用を領主が払ってくれる。でも、粉を挽くための石臼やその運搬にかかる費用は、領主だけでなく粉挽きも負わなければならないよ。さらに、水車や装置を動かす大小の歯車などは、粉引きが自前で修理、購入しなければいけないんだ。
人に憎まれて、なおかつ維持費のかかるだけの仕事なんて誰もやりたがらない。もちろん、この仕事には旨味がある。まず、粉挽きは村の共同体に属していないから、村長による下級裁判権の支配を受けない。農民たちの理不尽な訴えにも法的に悩まされることはないわけだ。さらに、水車小屋の管理には水車用地の経営というおまけもついてくる。いや、おまけというには有益過ぎるかもしれない。なぜなら、この用地にはいくらかの耕作地や菜園、牧草地の他に、水車を回す河川の使用権も入っていて粉挽きは川で魚を獲ることさえできるのだから。領主権のひとつである河川利用権に守られた川で農民たちが釣りをしようものなら、たちまち罰金を課されてしまうだろう。
これだけの経済的優位にある粉引きは、当然ながら領主への貢納も大きい。でも、それを差し引いても粉挽きは農民たちとは比べられないほどに裕福だ。もし、君がそれほど野心家でなくて、出来るだけ人にも憎まれたくないのなら、都市の粉引き屋をお勧めするよ。都市内では当局の監視が厳しくて、粉挽きは下級役人のような位置づけになる。そもそも、穀物の売買や、家禽の飼育(穀物が飼料となる)が禁止されるから、たとえ目方をごまかしてもあまり利点はないんだ。
都市の粉挽きでは不満かい?まったく君は野心家なんだね。それならクレルヴォー修道院で水車小屋に空きがあると聞いたよ。受付係りの修道士ヨハネスを訪ねてみるといい。
シャンパーニュにて、1206年
Posted by 紗瑠々(しゃるる) - 2008.03.14,Fri
都市に住んでパン職人として店を構えたいとお考えですか?それならば、まず市民たちから嘘吐き呼ばわりされることを恐れない気持ちが必要です。市民や都市当局はいつでも、あなたがパンの目方や麦の種類・品質を誤魔化しているのではないかと疑っています。そこであなたは、市民の信頼を勝ち取るために、堂々と胸を張って当局の審査に挑めるようなパンを作らなければなりません。
目方や麦の誤魔化しは論外ですが、それ以外の基本的な決まりとして、原則1枚の銀貨(1デナリウスないし半デナリウス相当)の倍数に値する大きさパンしか作ってはいけません。もちろん、それよりも小さい額の貨幣はほとんどないからです。飢饉のときはどうすればいいのでしょうか?そのときは組合ないし当局の決定に準じて、パンの値段ではなく目方を変更します。これは非常に面倒な仕事ですが、麦価格に応じた目方でパンを作れるようにならないとパン屋の仕事は務まりません。
もし、あなたが誘惑に負け法を犯してしまったら、それこそ城壁の維持費捻出に苦心している当局の思う壺です。初犯の罰金は銀貨60枚で済みますが、二度目の場合は120枚で、三度目のときはもはや容赦なく720枚の銀貨でも足りないほどの罰金を支払わねばならないかもしれません。この額は、二週間分の稼ぎよりも高いことをよくよく頭に入れておいて下さい。また、大きな飢饉の後には、多少理不尽でも罰を負わされることを覚悟しなければなりません。都市の役人たちはいらだった市民をいくぶんか落ち着かせるのに我々を必要としているのですから。
都市行政府は市民が飢餓に苦しまないようにと、計画的に麦を買い入れますが、計画が狂って在庫に余りがでてしまったとき、パン屋はに市が定めた幾分高い値でその麦を購入する義務もあります。先代のパン屋の中には、これに抗議した者たちもいましたが、結局のところ罰金を支払う破目に陥ってしまいました。当局には逆らわないほうが無難でしょう。また、パン屋には週に何日か周辺農村から出向いてくる個別のパン売りというライバルがいます。特にあなたが低所得者向けのパンを中心に作っているとき、彼らは大きな障害となるでしょう。
嫌な話を聞いてパン屋になる気は失せてしまいましたか。しかし、パン屋はすばらしい仕事です。もう諦めてしまうと言うのはもったいない。パン屋は都市の人々――それも老若男女、金持ち貧乏人を問わず――に日々の糧を与える大切な職業です。町の名士にはふかふかの白パンを、多くの市民たちには褐色の小麦パンを、そして日々の生活で手一杯の貧しい者たちには全粉パンや混合麦のパンを、それぞれ提供するのです。あなたの作るパンがあるからこそ、役人も商人も、職人も日雇い労働者もせっせと働くことができるのです。
パン屋の仕事は粉をふるいにかけることから始まります。このふるい作業、簡単なようでいて実は結構大変なのです。このふるいが上手くいかないと、市当局に目を付けられることになります。ふるって種類別にしたパンを、よく捏ねて、作っておいたパン種と混ぜて丸い形にととのえます。このときの重量を決めるのにも熟練の技が必要です。なぜなら、審査の対象となるパンは焼きあがったパンなので、水分が蒸発する分パン生地の状態から軽くなるのです。これを考慮した上で、最後にパンを窯に入れて焼き上げます。1日に3、4回行うパン焼きで、パンを取り出す時間を決めるのはパン職人の経験と勘です。焼きすぎて硬くなったり、生焼けになったりしないために徒弟の頃によく学ぶ必要がありそうです。
こうしてできたパンは、店から張り出した台を通して売ることができます。普通、客にパンを渡すのは職人の妻か女使用人です。また、もしあなたが職人として成功すれば、市場に売り台を出してもっと多く稼ぐこともできるでしょう。パンは町の居酒屋や旅籠にも売られていきます。居酒屋での憩の時を創るのも、旅人の空腹を満たすのも、あなたの作るパンなのです。
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古代ローマ史、ギリシャ神話なども含め、西洋史全般に興味があります。中世史では特に社会史が好きです。記事への付け足し、感想、批判などなんでも気軽にコメントして下さい。では、当資料室をお楽しみ下さい。
このブログについて
「紗瑠々の資料室」は中世ヨーロッパ世界を中心とした情報サイトです。通史・軍事・城・都市・農村などの中世社会を理解するにあたってポイントとなるものを少しづつ紹介しています。学術的なものではなく、一個人が趣味で収集した資料ですので不適当なところもあるかと存じます。お気づきの点がございましたら、ご指摘をお願いします。
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