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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

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騎行-正当な破壊活動

中世ヨーロッパの全体を通して、王や諸侯同士の大きな戦争から、近隣領主間のフェーデに到るまで、戦いの中心であったのは攻城戦と、敵領地への急襲でした。この襲撃はフランス語でシュヴォシェと呼ばれるもので、日本語では騎行と訳されています。

騎行は、主に敵領地財の略奪・破壊が主な活動であり、敵の力を弱体化させることを狙いにしていました。騎行には農民の殺害や村落・都市への放火などの野蛮な行為が含まれていましたが、当時の人々(騎士)にとってみれば、騎行は戦略上の必要性から、正当なものとされていました。騎行の際に、騎士道の理念に邪魔をされる騎士は少なかったと思われます。

例えば、百年戦争中にエドワード黒太子が行った南フランスでの騎行について、イングランドの騎士が手紙を残しています。彼は、黒太子によって破壊された都市や地域のリストを載せた上で、以下のように述べています。

「フランスとの開戦以来、このたびの侵攻ほど大きな破壊を一地域に与えたことはないと存じます。なぜならば、破壊した農村地帯や都市は、戦費としてフランス王国の歳入の半分以上を賄っていたからです。」

このように、手紙を残したこの騎士は、騎行を敵の経済に打撃を与えるという目線から見ていることが伺えます。また、騎行は動かない敵を、大規模な会戦へ誘い出す挑発としての役目も担っていました。また、騎士や兵卒にとって騎行に加わることは、略奪品の獲得を意味していたので、軍隊の士気向上にも役立ったと考えられます。もっとも、被害者となる農民たちにとってはたまったものではなかったことは言うまでもありません。

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