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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

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豚の脂身と乳製品-中世のカロリー源

現代は飽食の時代と言われます。人々にとっては、どれだけ多くの量の食事を口にするかということは普通問題ではなく、逆にどれだけカロリーを抑えた食事ができるかということが重要視されているように感じます。しかし、中世の人々、特に恵まれた上流階級からはみ出た多くの一般庶民にとっては多くの食事で必要カロリーを得ることは死活問題でした。個々の食品の栄養価が低く、現代人よりはるかに体を動かす生活スタイルがとられていた中世においてはカロリーの高い食事が求められていたのです。

さて、自明のことですがカロリーを多く摂取するために、一番手っ取り早いのは脂質を摂ることです。南ヨーロッパ、地中海沿岸地帯では、古代ローマの時代よりオリーヴ油が人々に脂質を提供していました。オリーヴの栽培限界以北、アルプス彼方の北ヨーロッパでは、豚の脂身や牛や羊の乳製品が脂質を摂るための中心的な存在でした。ミルクはそのままでも蛋白質や脂質の貴重な栄養源でしたが、塩を加えたり乾燥させたりして、チーズやバターに加工することで保存性が高められました。これら乳製品の生産が特に盛んだったのは、ブルターニュ、フランドル、イギリスなどの地域でした。

このように、中世の人はカロリーを求めていたのです。栄養の問題でも、味の問題でも、中世のチーズは脂肪分が多くねっとりしたものが好まれたようです。最上級のチーズは乳の出がもっとも良くなる夏至の時期につくられたこってりしたもので、逆にあっさりした脂肪分少な目のチーズは安物とされたようです。
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