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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

水車 「用途の多様化」

製粉は水車の最も一般的な用途です。水車は普通、聖俗の領主が所有しており粉挽き人にそれを貸し出すという形をとっていました。領主たちは農民たちに強制的にこの水車で粉を挽かせて、その使用料を取っていました。挽き賃は地域や時代によって異なりますが持ち込んだ小麦の20分の1から10分の1くらいでした。この強制を徹底するために当時の農民は自家用の石臼を所有を禁じられていましたが、相当数の臼が自宅で使われていたようです。粉引きの臼ではビールを造るための麦芽の粉砕や、鉱石の粉砕が行われました。

また縦回転のローラー臼の誕生によって、オリーブやサトウキビ、樫の樹皮などの原料を潰して油や砂糖、タンニン(革をなめすのに使われる)を抽出したり顔料製造が行われました。ローラー臼はすり潰す用途のほかにも金属などの研磨に使われました。

クランクやカムの利用で水車の回転運動を上下運動へと変化させた水車もあり、そうしてできた水力ハンマーは織りあがった毛織物を叩いて強くする縮絨作業に使われました。また縦運動の水車は金属加工においても大きな革新をもたらしました。鉱石の粉砕、ハンマーによる鍛造、水力ふいごによる品質の向上と生産の拡大などです。水車はその他にも金属板の圧延・切断、硬貨の鍛造、坑道の排水、換気、鉱石の巻上げなどを行い、中世の工業に欠かせないものとなりました。

▼ローラー臼
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▼回転砥石
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▼水車による鍛造
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▼水力ふいご
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やっとシリーズ終了です。中世の技術、のカテゴリにしましたがもしかしたら「水車・風車」の方がよかったかなぁ…。もし他の技術を紹介するようなことがあればそうします。



水車・風車といった自然の力をそのまま利用する原動機は、イギリスの産業革命で発達する蒸気機関や他の原動機にその座を奪われていきました。水車はその立地条件が限られたものであったため、また動きが自然の状態によって左右されたことなどから倦厭されていきました。近世から現代にかけて衰退していった水車や風車は、今ではその多くが実用的に使われなくなり、現存するものの一部は観光用の見世物と化しました。
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