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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

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サレット-長い“tail”に守られて

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▲様々な形状のサレット(19世紀のスケッチより)

サレットの一番の特徴は、後ろに伸びた「尾(tail)」のような形状のネックガードがついている点です。このネックガードは、首からうなじにかけて広い範囲を防御できるようになっていましたが、兜前面は鼻の高さまでしか覆われていないため、顎当てなどの補助防具とともに使われることもありました。ネックガードは、兜全体が一枚の金属板を打ち出してつくったものではスカル(兜の部位のひとる:頭蓋を囲む部分)と一体になっていましたが、スカルが頭の形に合わせて作られている場合には、複数の金属板を鋲留めして後からスカルに接合されました。また、このネックガードは、時代が下るにつれて長くなる傾向がありました。

サレットの前面には可動式のバイザー(面頬)がつけられているものと、そうでないものがありましたが、どちらにしても目の部分に視界を確保するためのスリットが開けられていました。また、15世紀中頃にイタリアで生まれたサレットは、同時代に使われていたバルビュータとはかなり対照的な形をしていたために、バルビュータにみられる古代ギリシア・ローマからの伝統をほとんど継承していないタイプの兜であると考えられています。

ケトル・ハットと同様、単純なつくりであったサレットは発祥の地イタリアのみならず、ヨーロッパで広く普及しました。特によく使われていたイタリアとドイツでは兜の形状に地域差が生まれ、イタリア式のものはスカルが半球形のものが一般的であり、ドイツ式のものは天辺がいくぶん平らで、額に当たる部分から鶏冠のような飾りないし補助防具がつけられているものもありました。興味深いことに、サレットが隆盛から4世紀以上経過した第一次世界大戦において、ドイツ軍のヘルメットの形状に影響を与えたという見方もあるようです。
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