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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

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グレート・ヘルム-樽型兜

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▲グレート・ヘルムを被っている騎士

グレート・ヘルムは、複数の金属板を折り曲げて連結したものを円筒形に接合した兜で、頭部全体を覆うことができました。形状が、樽ないし、ひっくり返したバケツの形状に似ているために、バレル・ヘルム(Barrel:樽)やバケット・ヘルム(bucket:バケツ)、ポット・ヘルム(Pot:鉢)などと呼ばれることもあるようです。上記のような兜を英語でグレート・ヘルムと言いますが、中世においてはヘルムという言葉のみでこの樽型兜のことを意味していました。フランス語ではオーム、ドイツ語ではトップフヘルムと呼ばれます。

グレート・ヘルムは「頭部全てを覆う」ことを目的にして作られていたために、かなり単純な構造をしていました。そのために、いくつかの弱点を持っています。まず、頭頂部がほとんど平らであるために打撃系の攻撃に弱いということが挙げられます。また、兜が顔全体を覆っているために、非常に重く、また前面に開けられた一文字のサイト(のぞき穴)から周囲の状況を確認するしかないために視界が非常に限られていました。そのため、グレート・ヘルムは軽装で敏捷さを求められた下級の歩兵や弓兵には使われず、密集した騎馬軍団での突撃戦法を主とする騎士や、ほとんど動かない防御陣を組んだ重装歩兵重など、兜の重さや視界の悪さが影響しにくい兵士に使用されました。さらに、グレート・ヘルムには口の辺りに換気と呼吸用の穴が開けられていましたが、防御上の理由で穴がかなり小さくならざるをえなかったため、通気性も悪かったようです。また、兜から頭への衝撃を緩和するために、使用者は兜の下側で布製の頭巾を被りました。

12世紀末に生まれたグレート・ヘルムは、十字軍遠征に参加した騎士たちに多様されたこともあって、騎士の防具の象徴となっていきます。また、13世紀末になるとグレート・ヘルムには丸みを帯びさせて頭頂部を尖らせるという改良が加えられました。この改良により、これまで平らな面で直接打撃を受けていたのが、打撃を横に流して力を弱められるようになりました。頭頂部に丸みを帯びたこのグレート・ヘルムは特にシュガーローフと呼ばれることもあります。改良されたグレート・ヘルムは14世紀頃まで使われましたが、バイザーのために良好な視界・通気性を確保することのできたバシネットに、しだいに取って代わられていきます。15世紀において、グレート・ヘルムは騎士のトーナメントにおいてしか使われなくなりますが、それでも代表的な騎士の兜としての座を保っていました。

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▲サイトと通気孔、頭頂部に装飾を施されたグレート・ヘルム

グレート・ヘルムには実用性だけでなく、装飾性も同時に求められていました。例えば、初期の通気孔はただの小さい穴でしたが、後に十字などの模様をかたどったスリットが登場します。また、横軸のサイトにあわせて縦軸の装飾が付け加えられて顔前面に十字を描いたグレート・ヘルムもあります。特にドイツの兜に多かったものとしては、兜の天辺上に王冠や翼、紋章を現す旗やの飾りを取り付けたものがあります。栄誉や名声を求める騎士階級に使われた防具であるからこそ、このような装飾が発展したのでしょう。
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