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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

シュミーズとローブ-中世の庶民の衣装




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中世の衣服、なかでも一般庶民の衣服については現在でも不明な部分が多く、その実態はなかなか掴めません。中世の文書や図像資料は上流階級についての情報を残すことに主眼を置いていました。それらの文書や絵画は貴族などの上流階級の発注によって、彼らのために作られたものであるからです。また、どうにか資料が見つかったとしても、それらには地域、時代によって様々な名称や用途があるので、中世ヨーロッパの服装を体系化して解明するのは至難の業のようです。

というわけで今回は、中世フランスの庶民が着ていた服装について、概観したいと思います。中世の人々の衣装は、14世紀に男性服における変化が起こるまでは、ローブ(長衣)が基本でした。ローブは上衣とスカートが一緒となり繋がった形状のもの、つまり今で言うワンピースのような形をしていました。女性はシュミーズ(ワンピース型下着)の上にローブを着るのが典型的な服装で、男性はシュミーズの他にブレー(長ズボン型下着)をつけ、その上にローブを着用していました。

シュミーズやブレーは普通リンネル製(麻ないし亜麻製)でした。一口にリンネル製といっても、リンネルの語源となった亜麻と、それより下級の繊維と見なされていた麻では価値が大きくことなり、亜麻布は麻布のおよそ4倍から6倍の価値がありました。毛織物製の上着から肌を守るため、貧しい人はごわごわする麻のシュミーズで我慢しなければなりませんでしたが、裕福な人は全ての下着を亜麻製で揃えることができました。その麻布でさえ当時の感覚からして安価なものであったわけではなく、貧しい農民は換えのシュミーズを持つ余裕がないこともあったようです。

ワンピース型のローブは主にウール製(羊毛製)で、女性用のほうが男性用より丈が長くつくられていました。ローブは、色や形などが時代によって変化していきましたが、基本的な形に変化はありませんでした。男性用のワンピース型の服としては、ブリオー、コット、ウープランドなど時代や地域によって様々なものがあります。例えば、コットは現代のコートの語源で、男物の長さがふくらはぎからくるぶしまで、女物は裾を引く長さで、数世紀に渡って着られましたが、13世紀には衣装の主流だったようです。これらの衣服は、腰のところで帯をまわして体に固定されていました。

14世紀中ごろから、男性用の衣服に変化が起こります。男性は下着の上に、プールポワン(上着)とタイツ状のショート(脚衣)を着るようになったのです。この変化は、上流階級に始まり、それから都市部へ、そして農村へと広がって行きました。プールポワンとショートの組み合わせは、中世後期、庶民階級の男性の一般服となっていきましたが、ワンピース型の衣服は完全に廃れたわけではなく、ローブは中世を通じて人々に着られ続けました。
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