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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

バルビュータ-古代の伝統

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▲Y字型サイトとサイトの縁帯を持つバルビュータ (http://en.wikipedia.org/wiki/Barbute)

イタリアで花開いたルネサンス運動は、古典古代を見直していくことで人間性を再生しようとする潮流を生み出し、絵画や彫刻などの芸術や文芸の領域に留まらず、防具製作にも影響を与えました。この流れは、たんに古代文化の復興に終わらず、これまでにない新しい試みをする気風を生み出しました。ルネサンス時代のイタリアでは、この「再生」の中で、完全に頭部を覆うアーメットや後述のバルビュータのような新しいタイプの防具が誕生します。

バルビュータ(barbuta)ないしバルブータは14世紀に北イタリアで生まれました。英語ではバーバット(barbut)と表記されます。頭頂部が丸みをおびていて、かつ鉢が深くつくられているために頭の大部分を覆う事ができます。バイザー(面頬)はなく、正面にT字ないしY字型に開いたサイト(視孔)を持っており、また鼻や口も露出しているのでこのサイトは呼吸口も兼ねていました。バルビュータは、正面がほとんど露出しているものや、ハート型のサイトを持つもの、額から鼻までの部分に鼻当てが付けられているものなどさまざまな形状のものがありました。また、兜を滑った刃が顔に当たらないようにするために、サイトの縁にストッパーとしての帯が鋲止めされているものもありました。

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▲コリント式兜 (http://thewalters.org/exhibitions/heroes/gallery.html)

バルビュータのモデルは、紀元前8~7世紀、古代ギリシアに普及していたコリント式兜です。基本的な形状は、バルビュータとコリント式兜でほとんど違いはありませんが、コリント式が頭頂部に羽飾りなどを付ける装飾性を持っていたのに対し、バルビュータは実用性に特化しているといえます。バルビュータのような兜は正面のサイト以外の頭部を全て覆っているので、グレート・ヘルムには及ばないものの、かなり防御に適しています。

その反面、耳を覆ってしまっているので指示が聞こえずらい、暑い、重いなどの欠点があります。これらの欠点を改善するために古代ギリシアでは、耳を露出させたり、頬当てを可動式にするなどけの軽量化が図られました。バルビュータは、グレート・ゲルムよりも視界が広く、呼吸が楽であり、ケトル・ハットやノルマン・ヘルムよりも防御域が広い、中間をとったような兜として、活用されたであろうと思われます。

ちなみに、管理人のお気に入り映画の「ロード・オブ・ザ・リング」に登場するゴンドールの兵士の兜はバルビュータがモデルのようです。

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