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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

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小麦、ライ麦、燕麦、大麦-麦の4種

古代から現代にいたるまでの他の時代の歴史でもそうであったように、中世においても小麦は麦の王様でした。他の穀物に比べ、グルテンを多く含んでいるために柔らかくふっくらと焼けるパンは小麦粉でしか作れなかったのです。小麦粉で作られるパンの中でも、一度挽いた小麦をふるいにかけて落とした真っ白な小麦粉で作った白パンは最高級のパンで、このようなパンを食べられるのは貴族や裕福な商人などに限られていました。ふるいに残ったふすま入りの目の粗い粉からは二等級のパンが作られ、市民ら平民層の糧となりました。白パンは栄養的な観点からはとても褒められたような代物ではなく、ふすまを除いてしまったことによりビタミン・ミネラルが大きく欠けていました。白パンと全粉パンと比べると、例えば鉄分は2分の1、ビタミンB1は3分の1と圧倒的に栄養価が低い食べ物でした。

ライ麦は、単体でもパンを作ることが可能で、かつ小麦より耐寒性に優れていたので、ヨーロッパの中でも寒い北欧、ロシア、ドイツなど多くの地域を中心に栽培されていました。ライ麦で作るパンは黒パンで、白パンに比べると固くて重いものでした。黒パンは白パンに比べて二倍以上のビタミンを含んでいたので、貴族のように様々な食事から栄養を獲ることの出来なかった庶民に必須の食事でした。

カラス麦ないしオート麦とも呼ばれる燕麦は、ライ麦よりさらに厳しい条件下でも育つことが出来ます。そのためアルプスなど山岳地帯やスコットンドなどでも栽培されていました。燕麦単体ではパンが出来ないので、いくらかの小麦を混ぜることでパンを作りましたが、それでも平べったく黒っぽいので黒パンの部類に入ります。燕麦は他の麦に比べてたんぱく質、脂質などが多く含まれていたので、食物の少ない寒冷地や山岳部の庶民の大切な栄養源となりました。

大麦もライ麦や燕麦と同じく、小麦が栽培できないような寒い地方でも栽培されました。大麦はパンにされるより、むしろビール醸造に多く用いられました。ビールは大麦や燕麦を発芽させ、その麦芽を乾燥させて発芽を止めてから細かく砕き、水に入れて発酵させて作りました。香り付けにはスパイスやハーブが用いられました。代表的な香り付けの原料はホップで、これには香り付けの他にビールの日持ちを良くする効果がありました。このようにして作られたビールは、ワインより一段下の庶民用の飲料としても飲まれましたが、地域によってはその土地の代表的な飲み物となって、パンと同じように庶民の生活を支えていました。
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