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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

城の構造 「主塔」

主塔は城砦の中心的存在です。主塔は城主一家の生活空間であり、宝庫であり、最強の防衛施設でもありました。大塔・天守・主閣と呼ばれることもあります。この塔は石造(初期の頃は木造)で、城の他のども部分よりも堅固に造られていました。普通は高さ20メートルくらい、直径は10メートル程度の塔でしたが、大きいものでは高さ30メートル幅20メートルになるのものまでありました。

ほとんどの主塔は矩形から、円形かそれに近い多角形に変化していきました。これは攻撃を受けた際に角の部分が破壊されやすいことへの対処でした。また、他の塔にもいえることでしたが、塔の最上部は少し出っ張った形になっており、塔の真下に迫った敵兵に煮えたタールや熱した石を落とすなどして、身を乗り出して攻撃するより遥かに簡単に敵を撃退できるようになっていました。

この塔は、平時は見張り台の役目を果たし、戦時となればその高さを利用して城の守備兵は有利に戦いを進める助けをしました。また、城門が破られ敵兵が城内に侵入しても主塔は簡単に攻略されないため、この塔は守備兵の最後の砦となることも多くありました。

この塔は城壁から離れたところに建てられることも、城壁やその他の建物と合体して立てられていることもありました。離れて建てられているものの場合、それらの塔の入り口が回廊や他の建造物に接していることはもありましたが、そうでない場合も多くありました。そのような塔の入り口は、地上から数メートル上がったところにあることが普通で、梯子で行き来をしました。この構造では直接塔内部に侵入できないため、主塔の防衛力が格段に上がったのです。

主塔の内部では、外への直接の出入口を持たない1階部分は捕虜を入れておくための牢獄か、金や貴重品、武器などを保管しておく倉庫として使われるか、あるいは篭城の際に最も重要となる井戸を設けていました。塔の上層部は数階の構造になっており、2階が居間、3階が城主とその家族の私室、4階は居候騎士の部屋などといったように分けられていました。そして、最上階は見張りの番兵の詰め所などが置かれました。塔内部の階段は人一人が通れるくらいの狭い螺旋階段で、攻め手が一斉に突入できないようになっていました。また、数メートルもあった厚い壁を利用してL字型の空間を設け、個室のようにして使う場合もありました。

火災の危険を避けるために、台所は別棟に設けられるのが普通でした。台所で作られた料理は、狭い階段を通って離れたホールまで運ばれましたので、城主一家はなかなか熱々の晩餐にはありつけなかったかもしれません。このように、主塔は城主一家の生活空間という面を持ちつつも、多分に防衛が優先されていたために、主塔での生活はあまり快適なものではなかったことでしょう。そのため、平時の城主の館として居館が別に建てられるようになっていきます。

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