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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

町から町へ-中世の飛脚

近代のような郵便制度ができる以前、公文書や手紙は飛脚を通して、町から町へ、城から城へと交換されていました。飛脚は商用のついでに飛脚を兼ねていたものと、専業のそれとがありました。前者は、各地を旅してまわった遍歴職人や巡礼者、大道芸人などです。また農民たちも賦役として、手紙配達の仕事を担っていましたし、農村部へ家畜の買い付けに出かける肉屋も、配達人として活用されました。

飛脚には特徴的な持ち物がいくつかあります。槍あるいは杖、それから小箱ないし壷、この二つが飛脚のシンボルでした。飛脚の衣服やこれらの持ち物には、飛脚が仕える個人ないし団体が持つ紋章が取り付けられていました。公文書や領主の指令所を扱う飛脚は、王家や貴族の紋章を持ち、大学飛脚は各大学の紋章を着けていました。大学飛脚は12世紀頃から、学生とその親との間の手紙や金銭の配達を担っていました。

早くも11世紀頃のシュトラスブルクには、司教に仕える24人の飛脚がいたそうですが、飛脚制度が一般的になるのは13、14世紀以降になってからのようです。市の紋章を掲げていた彼らは、商人が求めていた商取引の情報の他に、市民の手紙も請け負うことがあったようです。飛脚には基本給の他に、衣服、靴の維持費や槍や壷といった現物を支給されていたようです。
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