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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

小説フランス革命〈4〉聖者の戦い



佐藤賢一『小説フランス革命〈4〉聖者の戦い』集英社(2011)

シリーズ第四巻では、1789年10月、議会がパリへ移ってから、翌年1790年4月にいたるまでの約半年を描いています。この間、議会では着々と改革が進められていきます。

封建的特権の廃止により、貴族に引導を渡した議会が、次に目をつけたのは聖職者たち第一身分でした。10分の1税は封建的特権の廃止と共になくなっていましたが、さらに踏み込んで教会財産の国有化が可決、聖職者の「公務員化」が進められていきました。聖職者は、信徒のお布施や教会の不動産収入で暮らすのではなく、国家からの俸給で暮らすよう求められたのです。もちろん、聖職者である第一身分代表議員からは大きな反発が起きましたが、多くの貴族が亡命した今、第三身分が大部分を占める議会によって議事は進行していきます。

この国民議会の主力である第三身分代表議員とは、一言で言うならばブルジョワということになります。貴族よりも稼ぎの多い大ブルジョワから、銀行家、弁護士、職人の親方、商店主などの小ブルジョワまで様々ですが、共通しているのは生活には困らないだけの収入がある身分という点です。彼らが最も重視したのは、「自分たち」が議会での発言権を得ることと、国が安定し事業を円滑に進められるという2点でした。

問題となるのは「自分たち」とは、平民全てのことではなく、ブルジョワを指していたという点です。多くの第三身分代表議員の利害は、あくまでブルジョワの利害だったのです。ここに国民議会の状況が明らかになります。少数の自由主義貴族や高位聖職者などの保守派(ラ・ファイエットなど)、民衆の利益を考慮する少数の革新的第三身分代表議員(ロベスピエールなど)、そして大多数のブルジョワ寄り
第三身分代表議員という構図です。

この構図の結果を端的に表しているのは、1789年10月の新選挙法、通称マルク銀貨法です。定められた新しい選挙は、一定以上の納税者にのみ参政権を認める制限選挙でした。これ以上の革命を望まない、言いかえればブルジョワの利益を守りたい議員たちが多数派になった結果でした。そんな中、改革派議員たちはジャコバン・クラブを結成し、ロベスピエールを代表に選出していました。


シャルル・モーリス・ドゥ・タレイラン・ペリゴール
オータン司教、第一身分代表議員
(1754年2月13日 - 1838年5月17日)
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