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チリツモ【中世ヨーロッパ情報館】

"chiritsumo” 管理人チリが、中世ヨーロッパにまつわる情報を紹介していきます。

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「女教皇ヨハンナ」 ドナ・W・クロス

うう…今日も商品紹介とは情けない。まぁ、もうちょっとで書き始められるかと思いますが…。たぶん次の記事は水車とか風車、パン屋や肉屋などの記事になると思います。





ルイ敬虔王の御世、とある寒村で少女が誕生します。名前はヨハンナ、彼女は教皇になったただ一人のの女性でした。教皇庁が隠し続けてきた真実が今、明かされる!…という話です。歴史に抹殺された女教皇とは、なんともそそられる話ですが、史実的に見ていくと、これはヨーロッパに数ある伝説・伝承のひとつです。

で、それはさておきこの本のおすすめポイントなのですが…。まずもって哀しい。全体的に哀しい。この哀しさは作品の中で描かれる、時代の雰囲気がつくりだすのでしょう。中世ヨーロッパは何かと美化されがちですが、その裏で確実に存在した神明裁判、男尊女卑、ヴァイキングの襲撃、身分差別等、この時代の厳しさをしっかりと描きこんであります。

ヨハンナと騎士とのロマンスや、彼女の活躍なども見所のひとつではありますが、何よりもこの本の魅力は中世の残酷さや、いまだ帝国の面影を残すローマの様子など、時代が感じられる点だと思います。中世初期と後期はまるで別物であることを痛感させられる、そんな本です。訳本ですので、多少読みにくいところはありますが…僕は一気に読んでしまいました。テンポはいい本じゃないかなぁ。

 

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「ドラキュラ公」 篠田真由美

商品紹介第二弾。今回も時代小説です。…はい、お察しのとおり勉強中です。




東欧の小国、ワラキア公国を知らない人でもドラキュラを知らない人はいないでしょう。この本は、かの有名なブラム・ストーカーの小説「ドラキュラ」の主人公のモデルとなった、ワラキア公ヴラドの生き様を描いた小説です。

彼は串刺し公とあだ名されるように、何万もの反逆者やトルコ兵を杭で串刺しにして殺したと言われています。その恐怖がドラキュラのモデルとされるに至った所以であるのですが、彼は別に狂人だったのではなく、チェーザレ・ボルジアや織田信長のような現実主義者であったがゆえに残虐行為にも手を染めたのだというように描かれています。

後半は少しファンタジー色も入って、個人的にはなんだかなぁ、と思うところはありますが、東欧の歴史に親近感を抱ける数少ない小説ではないでしょうか。ちなみに…「コンスタンティノープルの陥落」塩野七生著を既に読んだ人は、内容が少しリンクしますのでより楽しめると思います。

「オクシタニア」 佐藤賢一

はい、時間がとれないときはこうやってどうにか記事を増やそうとしている紗瑠々です。おすすめは基本的に小説とかになると思います。まぁ、ときには異分子も混じるかもしれませんが…





今回のおすすめは佐藤賢一さんの「オクシタニア」です。舞台は13世紀の南仏。いまだ王権の弱かった頃、ここに異端の王国があった…。というお話です。

この異端とはカタリ派(アルビジョワ派)という東欧流れの教派です。特徴としては二元論を唱えていたことがあげられます。簡単に言うと、この世界をつくったのは悪魔で、天の世界を作ったのが神であるという考えです。そして、この悪魔の物質世界から抜け出して神の国にいくために、徹底的な物質の排除、すなわち禁欲主義が求められました。これは万物を神がつくりたもうたとする正統教会に受け入れられるはずもなく、ローマ教皇は異端撲滅のためにアルビジョワ十字軍を送り込みます。その戦乱に様々な登場人物が巻き込まれていく、といった内容です。

語り手が代わっていくのが特徴で、最初は北仏の騎士シモンが、中盤~終盤はトゥールーズ市民のエドモン、トゥールーズ伯レイモン7世が主人公となります。また、もうひとつ特徴として、フランスの北の言葉(オイル語)を標準語、南の言葉(オック語)を関西弁で書いてあるのがとても面白い。登場人物にメリハリがついて、話がぐっと読みやすく魅力的になっています。


        
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